文庫本は6巻くらいまであって、すごくおもしろい…と職場の後輩が言っていた。
私は『メスよ輝け!』の漫画の方を知っている。
卒後2年か3年くらいの時、ちょうど手術室で勤務しているときに職場で流行った。
全巻揃えているスタッフがいて、みんなで回し読みしていた。
こんな外科医いないよね~と言いながらも、その腕とカッコよさに酔いしれていた。
映画は、長い話を短くまとめました、という雰囲気はぬぐえなかったが、なかなかよかった。
確かな腕を持ち、世間体や富や名声には無関心で、ただひたすら目の前の患者のために働く。
目の前の患者のために働かずにはいられない。
患者や家族は救われる。
しかし、どこの世界でも似たようなものかもしれないが、
正義は「ある種の人たち」から疎まれる。
そしてその「ある種たちの人たち」の方が世間を形成している。
だから正義感の強い誠実な人は、どうしても世の中のレールからはみ出してしまう。
だけど、本当は「ある種の人たち」の中にも、自分を捻じ曲げて世間に順応している人たちがけっこういる。
主人公の当麻鉄彦は、そんな人たちの心をちょっと辛くさせつつ感動させるのではないだろうか。
彼に出会って、俄然仕事に面白さを感じ、頑張って勉強して当麻先生についていこうとする看護師の姿が描かれている。
彼女の気持ちが、ものすごくよくわかる。
自分が、人の役に立てる、人の役に立つことに使ってもらえる、そこに参加できる、一員になれる、という喜びは、スキルアップの原動力になる。
何したってどうせ何の役にも立たない、という環境では、何をする気にもならない。
すべてを環境のせいにするのも考えものだが、環境は関係ないとはいえない。
この映画には、人と人とのつながりが、人との出会いも人が生きる環境のひとつなんだという当たり前のことを通して上手く描かれていると思う。
あの人に出会わなければあのことを知らないでいた、あの人に出会えたからあんな体験ができたし、この人にも出会えたし、だからこんなこともできたし、…という、人と出会うことの幸せが、最後の場面で気持ちよく心の内側に広がる。
ちょうど京都でも、そんな人とのつながりの幸せを感じてきたところだったので、「ああ、そうだよね…」と、実感をもって共感することができる映画となった。
ちょっと疲れている方、お勧めです。