もう4回は読み返した、私のイタリア生活のバイブル。あるアメリカ人女性がトスカーナのコルトーナという小さな街に家を買って生活してしまうというエッセー。
イタリアへの憧れと楽しみが全て詰まった一冊。そして読んだときから、私は彼女が買ったこのブラマソーレという名の家を見てみたい、と思っていた。
2003年にトスカーナへ行くことにしたとき、私はブラマソーレを探す決心をした。本には、もちろん家までの地図など出ていない。ガイドブックにも載っていない。私は本を読み直しながら、家の位置を示すヒントを書き出した。
「街の中心から約1.6キロ。」
「メディチ家の要塞に来る観光客が間違えてよく車回しまで来てしまう。」
「テラスからトラジメーノ湖が見える。」
家は城壁の外だ。
私は、トラジメーノ湖の見える側で、メディチ家の要塞の方角にある城門をひとつ定め、そこから城壁の外へ出ることにした。あとは中心から1.6キロ程度の範囲を歩いて探す。
1時間くらい、ゆるやかなトスカーナの丘陵地帯を歩き回ると、ブラマソーレはみつかった。
薔薇色の壁、マリアの祠、本に載っていた写真と描写を思い出しながら、私はこれがブラマソーレに違いないと思う。
すぐそこのオリーブ畑(きっとブラマソーレの敷地だ)で作業をしていたおじさんに、本の登場人物かもしれない・・・と思いながら声をかけた。
「あの、この家・・・」
それたけで、ものすごい機関銃のようなイタリア語がたくさん返ってきてた。聞き取れたのは、「アメリカ人女性のもの書き」と「写真を撮るか?」ということだけ。充分だ。
こんな風にして家を見に来た人は、他にもいるだろうか?
去年このエッセーは映画化されて日本でも公開されたが、だいぶ脚色されていて、原作の方がずっとずっといい。
コルトーナの街に戻ってチョーク書きのメニューが入り口にかかったトラットリアで昼食を摂った。私たちがメニューを眺めていると、店の中から出てきた客のひとりが、「すっごくおいしいよ。」と教えてくれた。
店に入ってびっくり。
ブラマソーレの絵が何枚も飾ってある。
やっぱりこの家はコルトーナの人々の誇りなんだ、という感じがした。ここの料理は、私がこれまでイタリアで食べた店の中で、文句なしで
いちばんおいしい。
この日は、ピーマンと玉ねぎのニョッキ、
カルチョーフィのタリアテッレ、
鶏肉のオリーブ煮、を注文した。
コルトーナ、素敵な街。
ファエンツァに行くときは、またコルトーナに立ち寄りたい。