結婚式の翌日と翌々日は連休だっだけど、終らない仕事があって2日とも職場に缶詰だった。
でもただの缶詰では終わりたくないので、ランチは外でゆっくりとることにした。
1日目は職場近くのお気に入りのトラットリアでコースを食べた。
まずは前菜。
飲み物はグラスの赤を一杯だけ。
ここの前菜の盛り合わせはとても好きだ。
ちょびっとずつおいしいのはなんだか楽しい。いろいろあるとわくわくする。
季節によって一部変わるので飽きない。
真ん中はガーリック風味に
ドライトマトを加えて炒めた
ブロッコリー。
定番ながらかなりお気に入りの一品。
なぜかまだ真似して作ってみていない。近々挑戦してみよう。ブロッコリーの下茹で加減が命であると思われる。
いちばん手前は
タコのマリネ。
これはタコのおいしさもさることながら、口に入れた途端にふわっと香る爽やかなオリーブオイルがたまらない。トスカーナを思わせる。
その左の赤いかたまりは
トリッパ。
ひだひだの胃袋は懐かしい感じ。日本ではあまり食べる機会がないため、おもむろにイタリアを思い出す。また味付けもイタリアのまんま。
上品なレストランの味ではなく、「私の好きなトラットリアの味」がする。
その奥は
さつま芋をアリオリソースベースのオリジナルソースで和えたもの。
その隣は
かぼちゃと
ガーリックを炒めたもの。
さつま芋もかぼちゃも、どうして甘くしちゃうのさ、という私の主張に姿で同意してくれているような二品。
素材の甘さ以外の甘さはなく、ちゃんと塩気のある味付けになっている。
特にこのかぼちゃはイケてた。小さく切ったモッツァレラが散らしてあって、このミルキーさがかぼちゃとマッチする。年内に真似しよう。
残ったのは
いんげんのマヨネーズ風味の和えもの。
これもいんげんの茹で加減がばっちり。
プリモは
白菜とプロシュートのクリームソースのパスタ。
ここのトラットリアに唯一文句をつけるとしたら、それはパスタの茹で時間が若干長いことだったのだが、この日のパスタはすごくアルデンテで大満足。
セコンドは
豚フィレのバターソース、セージ風味。
クリームとバターとどちらがいいですか、ときかれ、消去法で「バターで。」と応えたのだが、ここは「オイルだけで。」と応えてみるべきだったと後悔。
お願いすればきっとやってくれたはず。
ドルチェは
フランボワーズのタルトと
バニラのジェラート。
タルト生地、けっこう好き。
フランボワーズ、わりかし好き。
そしてここのジェラートはいつもとてもおいしい。
最後にコーヒーもついて、すっかりイタリア旅行気分。
仕事に追われて休日出勤していることも忘れられるくらいにくつろぎモード。
近辺の会社勤めの人たちがランチに来ているパターンが多いので、ある時間を過ぎると人がはけてすく。
テーブルに私と、カウンターにおじさんがひとりだけになった。
「ゆっくりしていってください。」という言葉とともに運ばれてきたコーヒーを飲みながら、
私はカウンターのおじさんと厨房のシェフとの会話に耳がダンボになる。
おじさんはどうやら魚関係の仕事をしているらしく、
「今日の鯖をどうしたか。酢でしめたか塩だけか。」ということについてシェフと話していた。
おじさんがシェフに鯖をあげたのか、シェフがおじさんから鯖を買ったのかよくわからないが、
シェフは塩しかしていないと言うのに対し、
おじさんは、新鮮だから塩だけでも大丈夫だとは思うけど、酢でしめないのがちょっと心配なようだった。
なんということもないただの会話なのだが、その内容と状況が、私にはイタリアのどこかのトラットリアで見かけても、なんの違和感もないものに思えた。
おじさんは話しているだけではもの足りなかったようで、
奥の厨房へつながる戸口へ向かい、そこから身を半分厨房の中に乗り出してシェフと話し始めた。
カウンターに居たときはおじさんもシェフも大声で叫んでいたので話の内容がわかったのだが、おじさんとシェフの距離が近くなったので声のトーンが低くなり、
その後の話はみえなくなってしまった。
しかし、私はそこに居て、ほくほくした幸せを感じていた。
塩か酢か、しかもイタリア料理とはあまり関係がなさそうな鯖について、第三者的にはどうでもいいようなことを大きな声でああだこうだと言い合って、
挙句の果てにおじさんが厨房に乗り込む、みたいなこの風景は、私を幸せにさせるイタリア的要素をふんだんに含んでいたのである。
やりとりされる日本語を、私はイタリア語でイメージしてみた。
そうそう、ここはイタリアのとあるトラットリア。
私は、イタリアの長い昼休みに昼食をとりに来た。
そんなことがあったので、この日は一日中職場に缶詰のオフだったにも関わらず、
私にとって「楽しいランチの日」となった。
この記事をアップするのも1週間がかりという多忙の中にあっても、イタリアは楽しい。