モルフェッタで買物を ~CD
初めに駅から旧市街へ向かうとき、通り過ぎる新市街で、私たちは「ここでなら買物ができる!」と喜んだ。
通りの両側に、とうとう念願の、ちゃんとした靴屋や服屋が存在していたのである。
しかし、とりあえずは旧市街へ向けて進んでいた。
そして、さて、そろそろ買物をしよう、と思ったとき、靴屋は昼休みで開いていなかった。
私はCDも欲しかったので、ひとまず開いているCD屋へ入ってみた。
CD屋さんも、ここで初めて見かける。
小さな店で、中に入るとレジにいたおじさんがちょっとオドロキのまなざしでこちらを見た。
タワーレコードやHMVみたいにジャンル別に一目でわかるように表示して並べられているわけではなかったので、私はおじさんに欲しいCDを伝えた。
Arex Brittiの新譜は口頭ですぐ出てきたが、他のふたつはNHKイタリア語会話で最近流れていたもので、イタリアではけっこう古いもらしく、なかなか見つからない。
題名と歌手名のメモを見せて確認したが、在庫はなかった。
おじさんは棚を探しながらつぶやく。
“Troppo vecchio....”
そして、注文すれば明日の午前中に届く、と親切な提案をしてくれだけど、丁重にお断りした。
残念ながらここに住んでいるわけではないので。
実はどのCDもHMVインターネットで注文すれば簡単に買える。
私はArex Brittiの新譜が出るとお知らせメールが届くように登録してある。
ただ、「イタリアで買った」という付加価値が欲しくて、いつもわざわざ現地で買う努力をする。
自分にしか意味のない価値だけど、ネット注文よりずっと楽しい。
後日バーリで大きな本屋+CD/DVD屋を探し当てたが、やっぱり欲しいものはなかった。
仕方なく、
Lucio Dallaの“Ciao”と、
Vasco Rossiの“Ti Prendo e Ti Porto Via”は日本で買うことにする。
CDを買い終わっても靴屋の昼休みが終わっていなかったので、私たちはバルや道でのんびり過ごすおじさんたちに混じって、絵葉書を書いたりおじさんウォッチングをしたりしながら、時間が過ぎるのを待った。
《つづく》