ドゥオーモと旧市街
ちゃんとした地図のないまま旧市街に迷い込む私たち。
(心の隅で靴屋を探しながら)「多分あっちの方」にあるドゥオーモを目指す。
新市街に近い手前側の旧市街は比較的静かだった。木戸がぴっちり閉まっている建物も多い。
しかし、ワールドカップ熱はたいしたものだ。気が違っているかのようにイタリア国旗が下がっている。
サッカーにかける国民的意識が全く違う。
日本代表が決勝に進める微々たる可能性を求めて試合を分析する日本のスポーツ番組が馬鹿馬鹿しく思えてくる。
ワールドカップってのはこういうものなんだ。
それは私たちのバーリ滞在中に行われた準決勝のドイツ戦の晩に更に強く実感することになるわけだが。
迷いつつなんとか辿り着いたドゥオーモの前でさえこんな形相。
開いた口がふさがらない。
時間がまだ少し早かったせいか、ドゥオーモにはあまり人がいなかった。観光客もいなくはなかったが、バーリの観光客って、こんなものか、とちょっと淋しい感じ。
ドゥオーモの裏の駐車場には、わりとたくさんの車が停まっていた。
停め方には一応バーリ的な決まりがあるのだということにしておこう。斜めに停まった一台の車のドアが開き、中から青年がひとり荷物をもって出てきた。運転席にはやや年配の女性が座っている。
とても駐車場の中を走るとは思えないスピードでそこを通り過ぎようとした別の一台の車が、角を曲がりきれずに勢いよく停車しているその車の開いているドアに向かって突っ込んできて、ぶつかる数センチ手前で急停止した。そして間髪入れずに少しバックして、方向をきゅっと変えて猛スピードで走り去った。
これは普通の出来事なのか、「危ない!」と叫ぶべきことなのか。
「めちゃくちゃだね。」
友人Kが呟く。そう、めちゃくちゃという名の秩序。
はみ出した荷物を屋根に積む車。このまま走るのですか? 荷物は落ちないのですか?
この信号機はこのままでいいのでしょうか?
こんな信号機がそのまま設置してあることにも首を傾げるが、信号機がこんな状態になってしまうということは、どういうことなのか。
イタリア的交通ルールを考えれば、
赤さえわかれば問題はないのかもしれないが・・・。
いやはや、なかなか刺激的なバーリの街。
私たちはサン・ニコラ教会を探し、更に海側へ、つまり更に旧市街の奥へと進む。
《つづく》